葛飾柴又の駅に降り立った瞬間、ふっと鼻をくすぐる懐かしい空気。それは、かつてお茶の間のテレビ越しに眺めていた、あの「車寅次郎」が愛した風景そのものです。

今回は、日本人の心のふるさととも言える「葛飾柴又 寅さん記念館」を徹底レポート。単なる観光スポットを超えた、昭和の情熱と俳優・渥美清さんの魂に触れる旅へご案内します。

1. 昭和の記憶が息づく街、葛飾柴又の情緒

東京都葛飾区、江戸川のほとりに位置する柴又。ここは、映画『男はつらいよ』シリーズの舞台として、今もなお色濃く昭和の情緒を残しています。子どもの頃、テレビの画面越しに見ていたあの町並みが、今も目の前に現役の風景として存在していることに驚かされます。

駅前で迎えてくれる、寅さんとさくらの再会

柴又駅を降りると、まず目に飛び込んでくるのは「フーテンの寅」。そして、旅立つ兄を優しく見送る「見送るさくら」像です。映画のワンシーンをそのまま切り取ったようなこの銅像を前にすると、まるで自分も映画のエキストラの一人になったような錯覚を覚えます。

寅さんの像「おめえたちには分からないだろうが、 これが渡世人の辛れえところよ…」
さくらの像「お兄ちゃん、どうしても行っちゃうの?」

帝釈天参道と、今も健在な「とらや」

帝釈天へと続く参道には、名物の草だんご屋や煎餅屋が軒を連ねます。お馴染みのアーケードを歩けば、どこからか「バカだねぇ、兄ちゃんは」というさくらの声が聞こえてきそうです。

帝釈天

劇中のモデルとなった老舗「とらや」も健在。ここで一息つきながら、これから向かう「寅さんワールド」への期待を膨らませましょう。ここまで来たら「草だんご」一択です。

憧れのとらや渋い、渋すぎる

2. 「葛飾柴又 寅さん記念館」への誘い

参道を抜け、江戸川の土手を目指して歩くと見えてくるのが、今回の目的地「葛飾柴又 寅さん記念館」です。地下に広がるその空間は、まさにタイムマシンの入り口です。

寅さん記念館 入場料・基本情報

区分料金
一般500円
児童・生徒300円
シルバー(65歳以上)400円

※「山田洋次ミュージアム」との共通券になっています。開館時間:9:00〜17:00

3. 俳優・渥美清という「国宝」を想う

館内に入り、寅さんの歴史や過去のシーンを改めて見返すと、一つの強い感情が湧き上がってきます。「渥美清という俳優は、もう二度と現れないだろう」ということです。

誰よりも「車寅次郎」という役を大事にし、そのキャラクターを完璧に全うした人。私生活を明かさず、寅さんとして生き抜いたその姿は、まさに「俳優国宝」と呼ぶにふさわしいものです。彼の表情一つ、セリフ一つが、時代を超えて私たちの心に突き刺さります。

寅さんの衣装寅さんの衣装 寅さんは昭和のミニマリスト

4. 3時間でも足りない!没入感たっぷりの展示エリア

この記念館のボリュームは凄まじく、思い入れがある人なら3時間、4時間はあっという間に過ぎてしまいます。とらやのミニチュア模型を眺めたり、過去シーンの抜粋動画に浸れるスポットが何箇所もあります。個人的にはここは世界遺産ですね

とらやのミニチュア本当によく作られています。こういったところに愛を感じます
寅さん記念館「寅さんの車窓から」

伝説の「くるまや」セットが目の前に

館内最大の目玉は、撮影所で実際に使われていた「くるまや」のセットです。中に入れば、そこはもう映画の世界。茶の間の空気感、使い込まれた柱の傷。まるで寅さんが「よっ」とフラッと遊びに来てくれるのではないかと感じるほどのリアリティがあります。

とらやのセット中へ入ってみましょう
寅さんのセット寅さんがうたた寝をしています。きっと歓迎してくれます
とらやの食事部屋ここで食事をしてみんなで笑ったり、タコ社長と揉めたりしていました

マドンナ選抜シーンとファンの熱量

歴代の「寅さんガール(マドンナ)」たちの映像エリアでは、足を止めて食い入るように見つめる年配の方々の姿が非常に印象的でした。きっと、それぞれの人生の記憶とマドンナの姿が深く結びついているのでしょう。その思い入れの深さに、改めてこの作品が国民に与えた影響の大きさを知らされます。個人的な推しは吉永小百合さんです。若い頃も本当にお綺麗です。

5. アクセス方法:柴又への行き方

■電車をご利用の場合
京成金町線「柴又駅」下車 徒歩8分。上野方面からの場合は、京成高砂駅で金町線に乗り換えます。

■北総鉄道をご利用の場合
「新柴又駅」下車 徒歩12分。

■お車をご利用の場合
江戸川河川敷にある「柴又公園駐車広場」を利用するのが便利です。

6. 結びに:私たちが寅さんに会いに行く理由

子どもの頃、何気なく見ていた寅さんの物語。大人になってから訪れる柴又は、当時よりもずっと情緒深く、温かく感じられました。不器用で、真っ直ぐで、でも誰よりも優しい。そんな寅さんの精神が、この記念館には今も息づいています

日々の生活に少し疲れを感じたとき、日本人の原風景に出会いたいとき。ぜひ、葛飾柴又を訪れてみてください。そこには、変わらない笑顔で私たちを迎えてくれる寅さんが待っています。

「私、生まれも育ちも葛飾柴又です。帝釈天で産湯を使い……」
あの口上が、今も江戸川の風に乗って聞こえてくるようです。